これらの製品の開発は、FRPプランターしか事実上の選択肢がなかった景観事業での経験が元になっています。
この記事ではSITECが木製プランターを作ってきた経緯を記載致します。
弊社が木製プランターの開発にとりかかった2003年当時はガーデニング・ブームの中にあり、ガーデン施設の製作を受けたことをきっかけにガーデニング事業を始めます。
ある時、木製プランターを製作する業務を引き受けます。
私自身、以前勤めていた勤務先で担当者としてFRP、クレイ、プラストン、GRC、磁器、陶器、コンクリートなどのプランターや様々な景観製品を多数取り扱ってきた経験があり、その時に感じた課題を振り返り、木製プランターの製作を行なうことにしました。
前職の業務では、プロジェクトで景観製品のプレゼンテーションを設計コンサルタントや行政へ提案する機会が幾度となくありました。
この様な時には、他のストリートファニチャーに混ぜて合わせてFRPプランターも提案に組み込むのですが、
『FRPプランターは景観事業にそぐわない!』
という議論がその都度出ていました。
一流のコンサルタントが関係するプロジェクトはどれも
『素晴らしい景観を作る!』
ことがミッションの中核に潜在しています。
そのことに対し、FRPプランターはプラスチック素材ですから景観に合わすことが難しいのです。
長く使えるとしても短期間で劣化が目立ち、割れや歪みが発生してしまうと元に戻らず、長きに渡り景観を犯してしまうからです。
他の素材の製品もあるにはありました。
コンクリートは長持ちするが風景作りには難。圧倒的な重量。
GRC、プラストン、クレイなどは天然素材を混合してその表情が魅力的だが、収縮率がまだらなため高確率でひび割れが発生。ひび割れは景観を著しく犯すため短命で廃棄される。
磁器、陶器などの焼き物は大型化不可。
『FRPの代わりに木製プランター』という意見を出す人も都度いました。
『何年持つの?』
『3年くらい…』
議論は何時も同じです。
3年くらいで朽ちて壊れる木製プランターは、総合的に見てFRPに劣るのです。
結局、誰も代替え品を見つけることができずに、結局FRPプランターを提案することになるのでした。
『FRPは大量に作ることができるし(景観的は我慢してもらって)、10年は使えるかもね』
というのがお決まりの落としどころでした。
そんな軽薄なsalesに誰もが納得するしかなかったのです。
さて、SITECが木製プランターの注文をはじめて受けて製作を行おうとする時、塗装やpH(ペーハー)などの条件を研究すれば長く使える製品ができるのではないかと希望を持って挑みました。
目標値は10年です。
この期間は前職時に顧客から聞き回った時に得られた解答です。
10年という期間は、一般的な人が耐久製品に求める長さの様です。全ての人ではありませんが、殆どの人がそう見ている様です。
ですから、
『FRP製プランターに代わる製品は、10年の使用に耐えられなければ説得力がない』
ということが開発の根本にあります。
プランターの場合、土壌や植物の活動が前提になりますから常に湿気た状態で使います。
木材にとっては非常に過酷な環境です。
最初に試作品として製作したプランターはマツ材です。防腐剤と塗装を丁寧に施し10年の願いを込めて作り、植栽をして経過を待ちます。
10年経たねば成功は得られません。失敗はその時点で分かります。
結果は3年と少しで腐食、分解しました。
一方、顧客から注文をいただいた製品は担当者との合意のもとでグレードの高い米国産のレッドシーダーで製作しました。結果的に少し耐久性のある木材でもあり、北海道で夏季に限り使用し、秋には洗浄・乾燥させて倉庫に保管して使用してくれていましたので私の確認した範囲では13年間使っていただいていました。その様な大切にした使い方ならば、現在もまだ使い続けられているかもしれません。
最初に製作したマツ材のプランターから、更に研究を重ねて多くのプランターを作りました。
防腐薬剤の加圧注入を施した木材を使った事もあります。
大半は3-4年でダメになりました。
中にはもう少し長持ちするものもありました。そんな試材では何故長持ちしているのかをじっくり研究しました。後に長持ちのための技術的な研究には非常に役立っています。
以上の様な経験から防腐剤や塗装だけでは木材の腐食は防げないということが分かりました。
割れや小口からの菌類の侵入などで、木材は内部から崩壊するからです。
販売数を除いても100台くらいのプランターを作り使用テストを行いました。
多くの試験の結果から解ったことは、木材自体が耐久性の高い木質でなければ長持ちしないということです。
日本産の木材で、水湿に強く、防腐効果の高い木材を探しました。 見つけたのは『ヒノキアスナロ』という檜葉の木です。
2013年 この木材を仕入れ初めて試作品を作りました。もちろん今まで得られてきた耐久性の工夫も組み込みます。
そして、これに植栽するのですが、結果は10年後にならなければわかりません。
10年後です。
2023年、10年間屋外で使用したヒノキアスナロ製のプランターの塗装を剥ぎ、塗り替えを行いました。
塗料は劣化したものの木質の劣化はほぼ見られませんでした。
ここにやっとFRP製プランターに代わる高耐久の木製プランターが完成しました。
SITECの木製プランターは、景観の質を向上させ、更に長く使える様々な試行も行ってきました。
マツ材でたくさんの製品をつくり、植栽を行ったことでは多くの教訓も得られました。
結果的に加速度試験を行ったのと同じ効果となり、木質の持つ弱点や改良方法を知る手がかりとなっています。
土と木質が直接触れない工夫、木材の小口が割れない工夫、板目木面が割れにくい工夫など、製作工程上での小さな改良の積み重ねも含めて総合的に製品に反映させています。
出来上がったヒノキアスナロ製のプランターは、他の家具職人が見て、『そんなの簡単に出来るよ!』と言われることはあります。
そんなことは当然出来るでしょう!
しかし、屋外で使用するプランターというものについて、作る目的や工夫の意味を即興では理解できることはありません。。
また耐久性に影響する効果的な塗装方法や目に見えないところの細工方法、工程の順序などは経過観察と経験値の繰り返しからしか得られません。
植栽を行ったことがない人が形だけをつくることも簡単です。
例え他の誰かが外観だけを真似て作っても同じ性能にはできません。
そして現在も、植栽を行いながら、運搬がしやすいとか、見栄えが良くなる小さな改良を重ねて製品の質は都度向上しています。
素晴らしい景観を作る場合には、SITECが開発した高耐久性の景観プランターをお使い下さい。