プランターの『耐久性』を再確認!

giga大型プランター

プランターの耐久性を再確認


”景観を壊すプランター?!

私は以前、勤め先の会社でさまざまな種類のプランターを取り扱っていました。
OEMでの取り扱いで殆どの素材のプランターの販売を経験して来ました。

その当時から、パブリック空間で使用される大型プランターの多くはFRP製でした。
FRPは軽量で、ある程度の強度を持ち、均一の製品を大量に製作できることが長所です。
他の素材の製品に置き換えられないもっともな理由として、

FRPプランターは長く使える

という認識を持っている人が多いことが挙げられます。

私はこの”長く使える”ということにとても違和感を抱いていました。
何故なら、納入して数年しか経っていない製品の角がかけたり、ひび割れたり、カーボンで汚れて見るに耐えない風貌になってしまいながらも使用されているFRPプランターを頻繁に目にしていたからです。

景観を良くするためのプランターが景観を壊してしまっている

ことが露わになっていたのです。

事あるごとに、この様な状況をなんとか改善できないものかと考えていました。

”プランターの耐久性とは何か?”

目的からみて、景観を作る製品の耐久性とはどの様に比較されるべきなのかを再確認してみます。

先ず、プランターの目的は、

緑が少ない都市環境を豊かにするために、植物を植えて景観を整え、憩いの空間を作る

ということです。
(プロジェクトにより多少の違いはあっても大きくは違わないでしょう)

ですから、プランターの機能は、

1.植物を植え育てること
2.景観を整えること
3.憩いの空間を作ること

だと考えます。
これらの観点からも『耐久性』ついて再確認しなければなりません。
以下に、耐久性の考え方を分類してみました。
4つの評価要素に分けます。

◆使用耐久性

プランターを植物を植える容器という機能で考えた場合、それが可能である期間をいいます。
この機能を10年間保持可能できる場合、使用耐久性は10年となります。

◆景観持続性

使用耐久性があったとしても、割れたり、ヒビが入った状態では景観に害を及ぼします。
使用耐久性の期間の範囲にあり、景観に害を及ぼさない範囲の期間を指します。
例えば、10年間植物を栽培できる製品であり、4年後からはひび割れや著しい汚れにより景観に害を及ぼす場合、景観持続性は4年未満となります。

◆破壊耐性

使用耐久性が高い製品だとしても、打撃、衝突、落下などの事故的衝撃については破損する可能性があります。
客観的な外力による壊れにくさを表します。
素材別に見て、破壊耐性が高いものとそうでない物があります。その破壊耐性により残存率に影響を及ぼします。
10年残存率の根拠のひとつになります。

◆10年残存率

使用耐久性がある製品であっても、場合によっては衝撃に弱い製品は破損し使用不可になることがあります。
一般的に使用した場合、10年後に使用可能な製品が残っている割合を表します。
例えば、10個の陶器を新調して、10年後には破損欠落により残りが7個である場合、10年残存率は70%です。
(※私が経験した内容を元にした概ねの数値です)

”さまざまな素材のプランターを比較してみる!”

以上の耐久性に関する項目を、プランターの素材に当てはめて表を作ってみます。

これらをレーダーチャートにしてみます。

FRP製の大型プランターの特性
FRP製は大型製品を作ることができ使用耐久性は高い。
構造的に中空であるためにベコベコの歪みが出来てしまい、衝撃に弱く割れ・欠けが生じる。
新しいFRPプランターは人工素材として”綺麗”に見えるが、3年を目処に劣化が目立ち美しさは乏しくなるため、景観持続性は低い。
素材的・設計的に排水性・通気性に問題があり植物生育には適さない。
自然風に見えるクレイ製品やセメント混合複合素材もこれに準じ、更にクラックが出るのでその時点で人目につく場所から引き下げられる

GRCやクレ素材の大型プランター
GRC製は景観との相性を狙った製品であるが、数年後のクラック発生率が高く、廃墟感が著しくなり景観を犯すため早い段階で廃棄される。
素材的・設計的に通気性に優れず植物生育は不適。

ポリエチレン プラスチックの大型プランター
ポリエチレン製は中空構造で大型製品を作ることができ衝撃に強い。
使用耐久性は高いが景観醸成には相反する。
素材的・設計的に排水性・通気性共が不良で植物生育には適さない。
ポリエチレン製プランター

陶器製の大型プランター
陶器(素焼き)は破壊耐性に乏しく不意な衝撃で多くのものが破損し、10年残存率は半数程度と低くなる。
また、焼き物であるが故に、焼成収縮の割れが多く、大型製品の製品化は大変難しい。
素焼きは通気性に優れているため植物生育に適しています。
世界中で伝統的に使われてきた素材であることからも景観の調和性に優れる。
(※同じ焼き物であっても陶磁器や磁器などの製品はこれらの内容とは異なります。)
陶器製の大型プランター

ASNARO

木製プランターは、使用する樹種の特性により、出来上がった製品はそれぞれの特性値となります。
さまざまな要素を研究して開発したのがSITECではヒノキアスナロ製のプランターです。
ヒノキアスナロ製のプランターは大型製品は剛性が高く衝撃にも強い。
使用耐久性、景観持続性、植物生育に良好です。
破損の場合修理が可能で残存率は最も高くなります。
修理や塗装塗り替えでリニューアル可能。
SITECでは塗装塗り替えのサポート、部品交換も可能。
木製の大型プランター

以上の内容から、プランターの特性を把握することができます。
プランターの採用については設置の目的をはっきりさせて選ぶことが重要です。

ヒノキアスナロ製の大型プランターは、他のプランターの問題点を個人的思考で改善することを目的に作られました。
そのため多くの面でバイアスがかかっている可能性があるかもしれません。
その点はお許しください。

また、木製プランターは一つひとつ手作りする製品なのでコストは少し高くならざるを得ません。
木材が得られるまでに、マツ材は30年、スギ材は50年、ヒノキアスナロ材やヒノキ材は100年の樹木生育期間が必要です。
これらの生育期間も木材のコストに大きく影響を及ぼしています。

それでも、持続可能な森林利用の観点も含めて総合的に優れた製品ができています。

ヒノキアスナロ製のプランターの採用を検討してみてください。

SITEC GARDEN

木製 大型プランター開発の経緯について

国産の高耐久性木材を使用した空間を仕切る大型プランターの特徴

SITECには多くの木製プランターのシリーズがあります。
これらの製品の開発は、FRPプランターしか事実上の選択肢がなかった景観事業での経験が元になっています。
この記事ではSITECが木製プランターを作ってきた経緯を記載致します。

弊社が木製プランターの開発にとりかかった2003年当時はガーデニング・ブームの中にあり、ガーデン施設の製作を受けたことをきっかけにガーデニング事業を始めます。
ある時、木製プランターを製作する業務を引き受けます。
私自身、以前勤めていた勤務先で担当者としてFRP、クレイ、プラストン、GRC、磁器、陶器、コンクリートなどのプランターや様々な景観製品を多数取り扱ってきた経験があり、その時に感じた課題を振り返り、木製プランターの製作を行なうことにしました。

前職の業務では、プロジェクトで景観製品のプレゼンテーションを設計コンサルタントや行政へ提案する機会が幾度となくありました。
この様な時には、他のストリートファニチャーに混ぜて合わせてFRPプランターも提案に組み込むのですが、

FRPプランターは景観事業にそぐわない!

という議論がその都度出ていました。

一流のコンサルタントが関係するプロジェクトはどれも

素晴らしい景観を作る!

ことがミッションの中核に潜在しています。

そのことに対し、FRPプランターはプラスチック素材ですから景観に合わすことが難しいのです。
長く使えるとしても短期間で劣化が目立ち、割れや歪みが発生してしまうと元に戻らず、長きに渡り景観を犯してしまう
からです。

他の素材の製品もあるにはありました。
コンクリートは長持ちするが風景作りには難。圧倒的な重量。
GRC、プラストン、クレイなどは天然素材を混合してその表情が魅力的だが、収縮率がまだらなため高確率でひび割れが発生。ひび割れは景観を著しく犯すため短命で廃棄される。
磁器、陶器などの焼き物は大型化不可。

『FRPの代わりに木製プランター』という意見を出す人も都度いました。
『何年持つの?』
『3年くらい…』
議論は何時も同じです。

3年くらいで朽ちて壊れる木製プランターは、総合的に見てFRPに劣るのです。

結局、誰も代替え品を見つけることができずに、結局FRPプランターを提案することになるのでした。

FRPは大量に作ることができるし(景観的は我慢してもらって)、10年は使えるかもね

というのがお決まりの落としどころでした。
そんな軽薄なsalesに誰もが納得するしかなかったのです。

さて、SITECが木製プランターの注文をはじめて受けて製作を行おうとする時、塗装やpH(ペーハー)などの条件を研究すれば長く使える製品ができるのではないかと希望を持って挑みました。
目標値は10年です。
この期間は前職時に顧客から聞き回った時に得られた解答です。
10年という期間は、一般的な人が耐久製品に求める長さの様です。全ての人ではありませんが、殆どの人がそう見ている様です。

ですから、

FRP製プランターに代わる製品は、10年の使用に耐えられなければ説得力がない
ということが開発の根本にあります。

プランターの場合、土壌や植物の活動が前提になりますから常に湿気た状態で使います。
木材にとっては非常に過酷な環境です。

最初に試作品として製作したプランターはマツ材です。防腐剤と塗装を丁寧に施し10年の願いを込めて作り、植栽をして経過を待ちます。
10年経たねば成功は得られません。失敗はその時点で分かります。

結果は3年と少しで腐食、分解しました。
一方、顧客から注文をいただいた製品は担当者との合意のもとでグレードの高い米国産のレッドシーダーで製作しました。結果的に少し耐久性のある木材でもあり、北海道で夏季に限り使用し、秋には洗浄・乾燥させて倉庫に保管して使用してくれていましたので私の確認した範囲では13年間使っていただいていました。その様な大切にした使い方ならば、現在もまだ使い続けられているかもしれません。

最初に製作したマツ材のプランターから、更に研究を重ねて多くのプランターを作りました。
防腐薬剤の加圧注入を施した木材を使った事もあります。
大半は3-4年でダメになりました。
中にはもう少し長持ちするものもありました。そんな試材では何故長持ちしているのかをじっくり研究しました。後に長持ちのための技術的な研究には非常に役立っています。
以上の様な経験から防腐剤や塗装だけでは木材の腐食は防げないということが分かりました。
割れや小口からの菌類の侵入などで、木材は内部から崩壊するからです。
販売数を除いても100台くらいのプランターを作り使用テストを行いました。
多くの試験の結果から解ったことは、木材自体が耐久性の高い木質でなければ長持ちしないということです。
日本産の木材で、水湿に強く、防腐効果の高い木材を探しました。 見つけたのは『ヒノキアスナロ』という檜葉の木です。

2013年 この木材を仕入れ初めて試作品を作りました。もちろん今まで得られてきた耐久性の工夫も組み込みます。
そして、これに植栽するのですが、結果は10年後にならなければわかりません。

10年後です。

2023年、10年間屋外で使用したヒノキアスナロ製のプランターの塗装を剥ぎ、塗り替えを行いました。
塗料は劣化したものの木質の劣化はほぼ見られませんでした。
ここにやっとFRP製プランターに代わる高耐久の木製プランターが完成しました。

SITECの木製プランターは、景観の質を向上させ、更に長く使える様々な試行も行ってきました。
マツ材でたくさんの製品をつくり、植栽を行ったことでは多くの教訓も得られました。
結果的に加速度試験を行ったのと同じ効果となり、木質の持つ弱点や改良方法を知る手がかりとなっています。
土と木質が直接触れない工夫、木材の小口が割れない工夫、板目木面が割れにくい工夫など、製作工程上での小さな改良の積み重ねも含めて総合的に製品に反映させています。

出来上がったヒノキアスナロ製のプランターは、他の家具職人が見て、『そんなの簡単に出来るよ!』と言われることはあります。
そんなことは当然出来るでしょう!
しかし、屋外で使用するプランターというものについて、作る目的や工夫の意味を即興では理解できることはありません。。
また耐久性に影響する効果的な塗装方法や目に見えないところの細工方法、工程の順序などは経過観察と経験値の繰り返しからしか得られません
植栽を行ったことがない人が形だけをつくることも簡単です。
例え他の誰かが外観だけを真似て作っても同じ性能にはできません。

そして現在も、植栽を行いながら、運搬がしやすいとか、見栄えが良くなる小さな改良を重ねて製品の質は都度向上しています。

素晴らしい景観を作る場合には、SITECが開発した高耐久性の景観プランターをお使い下さい。