私がプランターをデザインしたきっかけは景観を意識し始めたころの出来事に遡ります。
街の中に散乱する、汚れたり、壊れたプラスチック製プランターを目にして感じたことがありました。
それまでにプラスチックという素材にマイナス面は感じたことはありません。
しかし、景観というものを整えるためにはプラスチックという素材はあまりにも短絡的すぎると思ったのです。
しかし、他にどのような素材で作ることが出来るだろうと考えると真っ先に浮かぶのは木材です。
その発想で次に考えるのが腐るから駄目だろうという否定です。
”たかが木材”
”されど、多くの人が行なっている様に防腐をしても駄目か?”
”強力な加圧注入防腐剤はどうか?”
”木材はもはや古い素材だ。”
”いまの時代、木材は過渡的な素材なのだ。”
”木材に代わる新しい素材が誕生するまで…”
木材で作るとしたら? この程度の発想しか浮かばなかったのです。
時代は過ぎ、海外旅行に行く人が増えました。
グレードの高い観光地に行った人たちは海外の観光地にある木製デッキに魅せられました。
歩いた感じが快感だという人は少なくありませんでした。
そんなモチベーションを背景に、この時代は水辺開発の事業が流行り、多くの水上デッキなどが整備されました。
欧州にあるデッキ材は植民地時代の名残で、アフリカ、東南アジア、南米からの仕入れルートによるものでした。
硬くて腐りにくい広葉樹が使われます。ハードウッドと呼ばれています。
日本人としても同じものが欲しいとなります。
円の強さを利用して多くの熱帯雨林から買い付けました。
おかしなことかもしれませんが、日本の木材を使用しようとはならなかったのです。
日本では木材は一緒くたに選ばれます。
多くは樹種の特性はあまり考えず価格で選択されます。
日本人は無条件に安いものが一番好きなのです。
木材で何かを作ろうとする時、樹種を選択します。
たいがいは松材か杉材で選択します。
屋外で使用する場合は防腐処理をすれば何とかなると考えます。
しかし、防腐処理は木材のほぼ表面にしか防腐処理できません。
加圧注入防腐処理にしてもせいぜい表面から5mmしか浸透しません。
木材が屋外で割れないという条件であるならばこれにも効果があると言えるかもしれません、
しかし、早かれ遅かれ木材は割れます。
(※割れにくい使い方も経験値と技術のひとつです。)
多くの防腐処理された材料は、二時加工されたときに再防腐がされていません。
現場を見ると分かりますが、削り口や小口が防腐処理されずに露出していることは珍しいことではありません。
このことの結果として、国産材料はダメだという一般概念が出来上がってしまったのです。
他方、プラスチック製のウッドデッキ(みたいなもの)も存在します。
歩いて見ると分かりますが、木材の様な心地よさはなく、見た目も良くはありません。
これらのことを総括して、特に公共で行われる木材は長持ちしなければならないから熱帯雨林産のものを使用するとなったのです。
時代背景とポリシーは変化しています。
戦争によって崩壊した街を復興しようと夢中で産業を発展させた時代。
工業化によって失われた緑を取り戻そうとする動きは緑化を促進した時代。
目指したものが完成して、豊かさを求めた時代。
そして今、持続可能性を目指す時代となりました。
気候変動が世界中で認識されています。
化石エネルギーと資源枯渇が心配されています。
命に関わる人権問題が拡大されています。
木材の供給源からみると、地球温暖化問題を促進する行為はやめなければなりません。
熱帯雨林の伐採。
開発一方の亜寒帯樹林の伐採。
自国の木材資源を利用する必要があります。
自国の木材資源を使うことは持続可能性の問題以外にもメリットがあります。
国内の経済循環、山地の維持、そして日本のアイデンティティーです。
日本には多くの種類の木材があります。
SITECは屋外耐久性の高さからヒノキアスナロ材を選びました。