屋外使いの木製品の常識

ベンチ,デザイン

木製品は屋外使用で室内使用よりもはるかに早く劣化します。
この劣化をいかに小さくするか、ということが木製品を長く使えるようにするポイントです。

実は、この方法について現在のあらゆる木工品製造者や製作に携わる職人は無視しています。
何時の時代からなのか、壊れたらまた新しいものを作ればいい、入手すればいいという思考が時代の幅を利かせ、作り手もこの考え方に最適化してしまっているからです。

そのため、木製品は価値のないものへのシフトが進み、どうせ壊れたり腐食するから、そうしたらまた新たに… となるわけです。

木工職人も長持ちする研究ができません。経済が伴わないからそんなことをやったら自らの利益が減ってしまうのですから。
20世紀後半には、壊れないものを作る商売は上手くいかないという商売人の話がありました。
壊れないものをつくる製造メーカーは、その製品が世間に行き渡ると新たに購入してくれるユーザーが居なくなるからということです。
確かに過去から現在迄の経済の面から見れば理屈 通りだと思います。

皆様もそういう理屈を聞くと『その通りだ!』と思うでしょうか?
『本音と立前で考えろ』と思うでしょうか。
その点、私は馬鹿者で『そんなことするのは正しくない』と思ったものです。
その様な理論があったとしても、長持ちするものを作りたいと思うのがモノづくり屋だと思うのです。
商売が上手くいかなくなるとしても、それとは切り離して良いものを作り残したいですね。

屋外木使いのことで京都 清水寺の大舞台は興味深いです。
大舞台は建築物というよりも構造物です。建築物は屋根があり、構造部はそれに覆われ雨を凌ぎます。
対して構造物は構造部分が風雨に晒されるという作りになっています。
この様な構造物では真面目に朽ちなく、長く使える工夫が施されています。
『なにもそこまでっ』と思われることも設計者や職人が真摯に実行しています。
例えば、大スパンが必要な長い部材にはそれに適した素材として杉材なのですが、重要な構造部分の素材は留め強度に優れる上に腐れにくいケヤキを使用しています。
その構造部の仕口部分にはその一つひとつに庇(ひさし)が設けられているのです。
仕口は水分の吸湿 膨張に耐える様に遊びが設けられています。
この考え方は建築や家具の作りに殆ど見受けられません。
私も屋外用木製品をデザインしたりする場合、特に屋外用の木製ベンチの仕口の方法は深く考えさせられます。
屋外構造物の経験値のない家具屋に見せればブカブカの仕口は笑われますが、家具屋が作った製品は屋外でバラバラに壊れます。

屋外用の構造物やエクステリアを高度に作る技術はあまり引き継がれたり、認知されていません。
そういった技術を発見、発明することもSITECの存在 意義と考えます。

『住みつづけられるまち』〜SDGsより〜

札幌 大通り ガーデン

SDGsには『住み続けられるまち』という目標があります。
さて、皆様はこれをどの様なことだと考えているでしょうか?
この記事では、『住みつづけられるまち』について記載します。

SDGsは、2015年9月 国連で採択された世界の持続可能な開発目標です。
2030年のあるべき世界を目指し、世界192カ国が、17の目標と169のターゲットを採択しました。

この17の目標の中の一つに『住みつづけられるまち』というものがあります。
この目標はどの様なことなのか、そしてそれを達成するためにはどの様な行動が必要なのか。
考えてみたいと思います。

確実性を高めるため一つひとつの意味を確認してみます。
この項目の原題版の英語では”Sustainability City and Community”となっています。
wordの一般和訳は以下です。
◾︎Sustainability:持続可能性
◾︎City:都市、市民
◾︎Community:地域社会、共同体、社会、公共
日本語の補足説明として、「都市と人間の居住地を包括的、安全、強靭かつ持続可能にする。」とあります。
包括的、安全、強靭は日本語として、意味の補足が入れられています。
◾︎包括的とは、全ての意味を網羅しているさま、総合的なさまということでしょう。
◾︎安全とは、危険が及ばない。
◾︎強靭とは、しなやかで強いこと。

私の理解は次の様になります。
『地域社会を、継続できなくする要因に対し、安全な抗力を持つこと。』

さて、これらの目標を叶えるためにはどの様な行動が必要なのかを考えてみます。
地域社会を持続可能でなくする要因とはどの様なものがあるでしょうか?
自然災害があります。環境破壊があります。紛争などがあります。不調和などがあります。

SITECが行う事業の中には緑化やガーデニングがあります。
ガーデニングは都市環境を住みやすくします。
例えば、木々や草花を育てると、温度変化が緩やかになり過ごしやすい環境が作られます。
これを地域的に行えば効果の大きな広がりが期待できます。
ガーデニングや緑化は、人の精神面にも良い働きをもたらせます。
コミュニティーの活動にも発展させることができます。

「個人で」、「コミュニティーで」 を問わず、地域広範に行われるガーデニングは景観を優れたものにします。
広い面積の緑化はヒートアイランドの防止に役立つ可能性もあります。

SDGsの「住みつづけられるまち」の行動はガーデニングで如何でしょうか?

Biotopについて

ビオトープキスゲ

Biotopというワードを時々耳にします。
あいまいさや誤解が多い用語になっています。
本記事はBiotopついて記載致します。

Biotop とは野生の生物空間を指すドイツ語を起源としたワードです。
日本では作られた生物空間を指したり、作られた池を指すことが多いのですがそれは本来の意味とは異なります。
これは人工的に生物空間を模した空間を作った事例から、それがそのものだと思い込んでしまった人が紹介したからでしょう。

Biotop つまり野生生物空間は、生産者としての植物、消費者としての動物・昆虫、そして分解者の微生物などが相互の働きを循環させて存在します。
例えば、森林には樹木が目立ちますが、樹木や草などの植物には昆虫をはじめとした虫などが生息し、それよりも大きめな両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類も生存しています。水辺には湿地植物や水生植物に魚類が棲みついていることもあります。
樹木や草などの足元には土壌があり、目に見えなくとも膨大な数の微生物やカビなども生き続けています。
このようなものがBiotopの一つです。
海洋や極地にも様々なBiotop が存在しています。

SDGsなどの環境目標などを見ると生物多様性という項目があり、そのポリシーはビオトープの維持に他なりません。

余談になりますが、人工的につくられた空間であっても、自然化し持続的に再生するものはBiotop と呼んでも誰も異論は唱えないでしょう。