価格ばかりで選ぶと効果が期待できないことがある

SDGsでは『… 使う責任』という項目があります。

持続可能な人類の世界目標を掲げるにあたって、行動の結果は生産者だけに留まるのではなく、消費者にも責任があるということを認識させられます。

例えば、フードロスの問題では、食べられる量を超えているのにも関わらず購入してしまい、後で食べることなく廃棄してしまうこと。
これは生産者の責任ということではなく消費者の責任というのはあたりまえのことですね。

次の様な例もあります。
仕事で作業を行う人などは、作業能率の上がる道具を選びます。

コストのことばかりを気にして刃物を選んだのは良いが、

「全然切れない」
「一回使ったきりで刃が欠けてしまった。」
「研いでも切れ味が良くならない。」

結局、新たなソコソコの道具を買い直すことになってしまった。
最初に購入したのは使い物にならないので廃棄した。

このようなことも資源の無駄遣いです。
役に立たない製品をつくる事業者もどうかと思いますが、
性能を吟味しないで購入した消費者の問題も大きいと考えられます。

ところで、皆様は刃物を買い求めるとき、どのような基準で選定しているでしょうか?
価格で、デザインで、長持ちするもので、劣化しないもので、壊れないもので、切れ味で…

刃物といってもさまざまな道具があります。どれを選ぶかにもよるかもしれません。
職業で行う方は、素晴らしい効果が得られるものを使用するでしょう。
「儲からない仕事なので効果は分からないが安価なもので間に合わせる」ということなどもあるのかもしれません。
最近は数多ある製品の中から、目的に合うものを選ぶのはそれだけで大変な作業ですね。

包丁を買う場合どう選ぶか

食の職人ならば機能効率を優先し、
1.切れ味の良いもの。
2.長切れ(ながきれ)するもの。
3.長年使えるもの。
という項目を優先するでしょう。

家庭での料理ならば、
1.価格の低いもの。
2.長く使えるもの。
3.好きなデザインのもの。
などが考えられます。

道具としての刃物はとても大切です。
私は料理人ではありません。
ですからソコソコのモノを選びます。
とはいえ、料理も好きですのでソレナリのモノを選びます。
刃物は少しこだわりがあるので、スパッとした切れ味を持つ、研げる製品で、長年使えるものになります。

ネットショップで選ぶとなるとなかなか難しいです。
製品の特徴として欲しい情報が載っていないことが多いです。
だから掲載されている商品はどんなモノなのか非常に分かりにくいです。
外観はどれも似ているし、カッコよく見えて非常に安価なモノもあるし、使えるのかな? と思います。

私は刃物を選ぶときは次の点を見ます。
1.素材は何か?
2.どのように作られているか?
3.どのようなデザインか?

刃物の切れ味、耐久性、使いやすさの観点として上記の情報を探します。
素材を見れば切れ味と耐久性は大体わかります。
どのように作られているかは産地を見ると分かりやすく、日本には著名な産地が幾つかあります。
デザインは使用感を左右し、伝統的なデザインを踏襲するものは数多な改良や進化を遂げながら生き残った形、それがいまの形ということなので使いやすさは折り紙付きと考えられます。

以上の事柄を踏まえ具現化して書くと次の点で刃物を選びます。

1.素材は安来鋼(やすきはがね)のもの。
2.産地は岐阜県関市、新潟県三条、大阪のもの。
3.伝統を踏襲したもの。
(※あくまで個人的な嗜好。また日本には他にも良い産地が幾つかあります。)

これで選ぶと結構 偏差値上位の価格帯のものになります。
それだけ価格に大きなばらつきがあるということです。
きちんとした機能のものはそれなりの価格がします。

木工用鑿(のみ)の場合はどの様に選ぶか

木工の工具には鑿(のみ)があります。
細かい切り込みや細工には鑿を使います。
機械加工が発達した現代でも鑿は欠かせません。
使用頻度が下がったからと言ってもコスト基準で安価なモノを選ぶとはなりません。
この刃物もコストはピンキリで、店に行っても判断基準になる情報は得られません。
ネットで調べることになります。
確かな選び方は、やはり鋼(はがね)です。
鋼は付いているか? どんな種類の鋼か?
ということを調べます。
そして産地です。
のみの場合は包丁よりも厳格に選ぶ必要があります。
料理材料よりも木の方が固いからです。
質の悪い鑿は直ぐに刃こぼれが発生するものもあります。
私の場合は、安来鋼の白紙、黄紙から選びます。
より硬い青色紙の製品が上位にありますが、硬くて研ぎにくいことと、高価ということもあり必要十分なものを選択します。
更に硬い最高級なハイス鋼のものは感覚的にも硬すぎてなんだか肌に合いません。
鑿の使用方法には、鉋(かんな)の様に木材を削(そ)ぐ加工があります。削ぐと切断は本来同じ行為なのですが、真っ二つに分割する一方が大体でもう一方が極薄の場合には削ぐという行為になります。
ハイス鋼の場合、高い硬度を持つことと製造方法が異なるため刃物の厚さが薄く、刃物角も浅く作られています。
この様な薄い刃は材料に切れ込む作用が強くなりすぎて削ぐ加工には不向きなのです。
カミソリの刃を薄くし、刃物角を鋭角に傾斜させていくと、ある角度から切れ味が落ちるのと同じ原理です。

剪定鋏はどのように選ぶか

剪定鋏は生木の枝が切れることが必要です。
ガーデニングでは草花の茎や柔らかい葉も切りますので軽い切れ味も必要です。
剪定鋏は他の鋏と異なる点があります。
力を入れて堅枝を切るので刃と機構部が歪みます。
歪んでも切れる様に刃と刃が比較的強い力で擦り合わさる様になっています。
刃の形も蛤刃(はまぐりば)と半月形の受け刃が合う独特のものです。
固枝が逃げない形になっているのです。
この形の刃を研ぐのは平刃の様には行きません。
枝には細かい砂や泥なども付着している可能性もあります。
研ぐにしても分解の作業がひと手間あるので長切れするものが好ましくなります。
これらのことを考慮すると硬い刃が必要です。
安来鋼の青色紙が良いと思います。

料理鋏はどう選ぶか

料理鋏はそれほど硬いものは切らないと想像します。
せいぜい蟹(かに)の殻(から)か魚の骨くらいでしょうか。
鯛(たい)などの骨を想像しても刃が欠ける程の硬さではありません。
その分ちからもかからないので刃と刃の擦り付けの摩擦力もそれほど強くはありません。
紙の様に極しなやかなものも気にすることはありません。
清潔を保たなければならないのでその都度分解掃除ができた方が良いでしょう。
水湿のものを切ったり、洗ったりすることは頻繁なので錆びないということも使いやすさになります。
料理鋏の材質は錆びに強い鍛造ステンレスが良いでしょう。
鍛造して焼入れしたステンレスでなければ切れは良くないし長切れしません。
これに関しては貝印の関孫六全ての性能を兼ね備えています。


私の刃物プロフィールを記しておきます。
学生時代 機械工学・材料力学を専攻し、金属加工 切削工学を研究。
その後、木材加工を経験し、金属加工との理論類似点を体感。
自動カンナ用ハイス鋼(高速度鋼)の使用と平刃研ぎを経験。
木工用平刃ノミの多様なな材質の切れ味を比較し、その研ぎを経験。
高価なハイス鋼よりも安来鋼白紙が使いごごち良く、黄紙もまた優れていることを実感。
ガーデニングで剪定鋏(ハマグリ刃、安来鋼)研ぎを日常的に経験。
髭剃りカミソリは貝印ブランドが最良だと実感。(多分刃が厚い)
用途によっては手入れのしやすいステンレス製のメリットも実感。


刃物を選ぶときは、
安来鋼、三条(など)、伝統の3つのキーワードで選んでみてください。
間違いはありません。

大塚秀樹

理想はグリーントランスフォーメーションというけれど、日本では樹木皆伐、雑草枯葉剤散布

都市の緑

本日も行政が河川土手の雑木を伐採(皆伐)して住民から非難を受け、お詫びをしている場面がニュースになっています。 つい先日はお城の緑豊かな庭の樹木を強伐採して県知事が調査に行き遺憾を表明している場面が伝えられました。

こういう話を聞くと、さもあらんと思います。
このような皆伐に類する強伐採は今の日本では起きて当たり前だと思うのです。
なぜならば、多くの人が樹々や草花を鬱陶しく考えるようになってしまっているからです。

最近よく話題になるものにグリーントランスフォーメーション(以下GXと記)というワードがあります。
GXは気候変動防止の観点から経済のデカップリング関する内容として捉えられることが多いのが現状です。
脱炭素に象徴されるものばかりが表面に現れて目に見えてきます。
例を挙げると、産業および生活に関する部分の化石由来のエネルギーを自然エネルギーに切り替える(だけ)というものなどです。

しかし、本来はGreenとは環境の象徴だけに留まらず、環境変動の抑止、ビオトープの保存、生物多様性の保護などの意味合いを含み、Sustainableな地球環境を作る活動全体を表すことであり、またその行動のことではないでしょうか。

最近、都市や住環境では立木を邪魔者として伐採するケースが多くなっています。
落ち葉が困ると言うことが多いらしいのです。
アスファルト舗装が大半の地面を覆うようになると落ち葉が環境を汚すという意識が強くなったようです。
本当はアスファルトが環境を壊しているのですが。
生存可能な環境にはなんとか草花も育ちます。
ですが、都市では除草剤で邪魔者として不毛を求めます。
生命が存在することを嫌ってしまっています。

グリーントランスフォーメーション(GX)とは何を求めているのか、住み良い環境とは何かを根本から考えてみることも必要ではないでしょうか。

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