ハンバーガーチェーンの脱プラスチック

大手ハンバーガーチェーンの脱プラスチックは今から25年も前に始まった。
それまでは、ピエロや動物、プラスチック製のベンチなどで店内を装飾していた。
ある時から、脱プラスチックが始まった。
労働条件の改善が求められ始めた時代だ。
当時、複合プラスチック(FRP)は様々な工業製品として利用された。
中でもプレジャーボートやスポーツカーのボディーなど、それほど大量には作らないものを作る材料である。
型を作り、それに人の手で溶剤に溶かした樹脂とガラス繊維を交互に重ねていく工法だ。
機械を使った流れ作業ほど効率は良い工法ではないが、高価な製品をつくるので採算が合うのだ。

問題は、溶剤を使用することと、生身の人間がそれを取り扱うことがもっとも重大なことであった。
溶剤は人体に及ぼす有害性が重大問題となっており、厚生労働省が廃止の方針を打ち立て、これらを使用する工業は国内では不可能になり始めていた。
塗装、シルク印刷、そしてこの複合プラスチックの分野だ。
現在の塗料は特殊なもの以外は溶剤は使用されない。シルク印刷はカラー分解に置き換わった。複合プラスチックの成形は国外で作ることとなった。
FRPに限っては、この危険な仕事が人間の取り扱うものではなくなった訳ではなく、現在も日本の需要のために経済の弱い国の労働者が健康と引き換えに就業しているのだ。

しかし、日本企業はこのFRP事情を好機と受け取る。企業にとっては低コストになったということだ。

ハンバーガーチェーンが止めたのとは正反対であった。

ハンバーガーチェーンの取り組みは全てが改善されている訳ではない。
ストローや飲料の蓋は未だに使い捨てプラスチックだ。
それでもビニル袋から紙袋に変更したのもこの時代だった。
あまり良いことが言わる機会がないハンバーガーチェーンではあるが、
我々が大いに見習うべき、素晴らしい行動をとっているのだ。

『違法伐採木材』を使わない

『違法伐採木材の殆どを日本人が買っている』という報告はもう30年ほど前からあった。
当時、日本人の殆どはそんな事情を知らずに熱帯雨林から産する木材を購入していた。

日本人の環境に関する意識は非常に低かった。
そして現在も呆れるほどに低い。
今、再び熱帯材が市場に流通していて、それが違法伐採であるとのことが時々ニュースになっている。
東南アジアから入ってくる殆どの木材が違法伐採であるという事実がある。
『現地政府が承認した木材は合法材。流通木材全体の15%ほどが合法材』
例えばインドネシアでは無政府地帯と言われる地域が存在しており、ライフル銃で武装した組織が政府の立ち入りを拒み、森林伐採を支配しているのだ。
当然、持続的な森林管理にはならない。

熱帯地域の森林は『地球の肺』とも言われ、地球上の大部分の酸素供給を行っていると共に、二酸化炭素の吸収を行っていることで知られている。
落ち葉や植物遺体などのバイオマス層は、新たに萌芽する植物のゆりかごなのだが、熱帯林はバイオマスの分解速度が速く、土壌には薄いバイオマス層しか存在しない。
一度 伐採によって地面が更地になると強い日差しと高温のためにバイオマス層が消滅し、森林が再生できる地面ではなくなってしまう。
『森林破壊によってオランウータンが絶滅に瀕している』ということが時々聞かれる。
このことは生物多様性が崩壊している現実をも露わにしている。
熱帯雨林は更に日々刻々と縮小し続けている。

日本において熱帯材を購入するのは企業だ。
その売り込みに『少しなら良いだろう』という考えで一部の行政までもが導入している。
つい先ごろも札幌でもある有名ホテルが自社の施設を作るために大量の熱帯材を導入しようとしていた。
合法材の証明が取れないのではないかと業者に質問してみたが、
『市場に出回っているものを買って何が悪い?』という。
市場に出回っているものの中には違法なものは当然ある。
誰でも知っている筈だ。
日本政府の指針では『合法材の証明書』を取ることになっている。
トレーサビリティーを調査し、合法材であることを確認しなければならない。

心無い『企業の金儲け』のために地球上のある地域が破壊されている。
事業者よ、主観的な事業のために人類の持続可能性を台無しにしていいのか?

合法性が疑われる物資について、トレーサビリティーにより『合法である』という確認を取らずに購入を行うこと。
このような事例は取り扱った業者の責任ということだけに留まらず、当然に事業主の責任でもある。
市民は地域の概念から事業者のステイクホルダーである。
我々は理念と倫理を学び、企業への働きかけも必要だと考える。

持続可能な木材調達の指針

林野庁から持続可能な木材供給の指針が出されてる。
国産材に限らず、地球上の森林から供給される全ての木材についての指針である。

この指針は、木材を供給する者、木材を流通する者、木材を使って造作する者、木材を使って製造物を作る者、木材を使って経営資源を作る者が含まれる。

注目しなければならないのは、事業主体も含まれることだ。
現場大工が勝手に海外から違法伐採の材料を仕入れて、事業者の商業施設を作った場合などは事業者の責任であるということだ。
監督責任があり、言い逃れは許されない。

SDGsでも『作る責任』『使う責任』が謳われている。
地球環境を守るためにパートナーシップが必要だ。

違法伐採の木材を安く仕入れて、
『自分の商売だけが上手くいけばいい』なんてことがあってはならない。
倫理が求められる。